「高齢者介護における地域特性とその対策」というテーマでゼミ活動を行った。現在、我が国は、高齢社会を迎えて医療や介護の領域における課題が山積していると言っても過言ではない。しかし、その詳細を探ると、地域により特性があり、高齢化率、一つみても、地域によって差が生じている。実際、沖縄県は、平成25年時点において、高齢化率が18.4%で我が国において最も高齢化率が低く、最も高い秋田県の31.6%と比較しても、大きな差があることがわかる。ゼミでは、こうした地域特性の詳細を把握し、地域における対策や課題を研究している。
 そうした目的で学習している中で、各都道府県に「地域生活定着支援センター」が設置されていることをホームページで知った。「地域生活定着支援センター」とは、厚生労働省が創設した施設で、矯正施設を退所された高齢者と障がいのある人が福祉サービスを受けられるように更生保護施設や福祉施設と連携をとり、支援対象者との橋渡しをおこなうという業務を行っている。
 確かに、全国的に高齢者が増加するということは、矯正施設入所者における高齢者が増加することへとつながる。ゼミでは、そうした現状における地域生活定着支援センターでの具体的な活動について、詳しく知りたいと思い、地域生活定着支援センターの訪問を実施した。
 また、厚生労働省のホームページによると、近隣の都道府県の地域生活定着支援センター同志で連携も行っていることが述べられているが、本州から離れた沖縄県の地域生活定着支援センターが本州の地域生活定着支援センターと連携面でどういう工夫や対策を行っているのかなど、沖縄県独特の課題についても知りたいと思い、沖縄の地域生活定着支援センターを訪問先に決定した。
 訪問の際は、沖縄の地域生活定着支援センターでの実績はどのくらいか、業務遂行において困難な点はどういうことか、今後の課題はどういうものかなど具体的に教えていただいた。また、これらの内容については、ホームページ記事を作成し公開しているほか、2016年2月のキャリアゼミ報告会において報告を行った。

参加学生一覧

荒木健太、今石稜也、浦聡、大泉直輝、大平拓也、小野滉季、河津研人、木村萌、久保田悠斗、桑村侑夢、後藤田祥平、周藤幸子、田村和滉、辻賢太郎、土井上慎一、仲田留偉、平松将太、山本幹也、横岩亮太

学生の感想

経済学部 田村 和滉

 今回、沖縄県地域生活定着支援センターに訪問させていただき、センターの役割や機能、活動、支援の状況について普段では聞くことのできない貴重なお話を聞くことができました。
 センターでは、矯正施設の退所予定者で高齢または障害を有し福祉支援を必要とし本人が希望する場合において支援が必要だと認められた方を支援しています。業務の中に就職先を探したり、住居を確保したり、対象者の受け皿となってくれる介護施設や老人ホームを探したりする仕事があり、対象者にとってはとても大きな役割を担っていて再犯の防止の役割もあることが話を聞いてわかりました。そして、対象者の社会復帰、生活の定着に必要な役割を果たしており、重要度の高い施設であると感じました。
 また、この他にも様々な役割や課題があることが話を聞くことで理解し学ぶことができました。私は、このセンターの事についてもっと多くの人に知ってもらい、早期の課題解決が可能になることを望むとともに、センターの役割がもっと大きく良いものになればいいなと感じました。とても、貴重なお話を聞けてよかったと思います。

教員のコメント

経済学部 西本 真弓 教授

 今回のキャリアゼミ活動も、訪問先の選定から交渉、質問項目の事前やり取り、ホームページ記事作成にあたっての地域生活定着支援センターとの確認、対応まで、すべてゼミ生自身で行った。
 そもそも矯正施設は我々にとって身近な存在ではなく、矯正施設の状況の事前学習から始めた結果、矯正施設内でも高齢化が起こり、しかも高齢者の再犯率が高いなど、想像できていなかった部分が多いことを知った。また、地域生活定着支援センターは創設からまだそれほど長い期間が経っていないため、センターのあり方に関しても、まだ方向性を図っている段階なのかもしれない。
 沖縄では、職員の人数は不足しており、対象者が施設で禁止されているお酒を隠れて飲んで問題を起こすなどのお酒の問題、そして離島への帰住の希望など、沖縄独特の問題もあるというスタッフの苦労を聞いて、これから社会に出て働くことになるゼミ生も勉強になったことが多かったのではないかと想像する。